2020年10月3日土曜日

『ファウスト』と『ファウストの劫罰』


 

  『ファウスト』はヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの戯曲で、『ファウストの劫罰』はエクトル・ベルリオーズの歌曲である。『ファウスト』では、悪魔に心を売る人間が描かれる。しかしこの作品の最も不思議な点は、悪魔が人間的な魅力を備えていることである。ゲーテが尊敬したシェイクスピアの『真夏の夜の夢』のパックのように、ファウスト博士の傍を雀のように飛び回る悪魔メフィストフェレスは人間臭さに溢れ、作品を悲喜劇に仕立てあげている。

  悪魔メフィストフェレスが極上の魅力で世界中を圧巻させたのは、2008年11月METで上演されたロベール・ルパージュ演出によるオペラでのことである。メフィストフェレスを演じたのはジョン・レリエであった。ルパージュの演出に100%マッチしたレリエは、世界中の女性たちを虜にする魅力を存分に見せた。歌って踊る悪魔が「見ただけで人を幸せへと招く存在」というパラドクスを、私たちはどう解釈したらよいのだろう。

(詳細を細かく書いている方がいますのでこちらへ https://applause.at.webry.info/200812/article_3.html

  ここまで言っておきながら現在この上演を見ることは難しいが、最近、夜間にMETオペラを無料配信するサイトがあるようだ。5月に1度配信されたらしいが、再び、『ファウストの劫罰』が配信されることを願いながら、スケジュールを確認して見ていただきたい。

https://www.metopera.org/


(画像:『ファウスト』(一)、(二) ゲーテ 高橋義孝訳  新潮社1967年)